影無桜 (かげなしさくら)

 
昔隠岐国で耕田が稔らず不作が続いた。知々井の某に夢想があり「須佐大宮の境内に大きい桜が繁茂して、それが隠岐へ影をさす為に耕作が出来ぬ。早く出雲へ渡って須佐の国造に頼んでその桜を切ればよい」とのことであった。そこでその桜を切ったのであるが、その株から芽を出してやっと花が咲くようになると枯れ、又芽が出るというようになって今日に至る。これは五穀豊饒の祈祷のことをいったものか。